ミュージックシアター「浄土」
2月6日(日)
横浜BankArt1929にて。
まずこの作品について。三島由紀夫の短編小説「志賀寺上人の恋」の舞台化である。
(三島には数多くの戯曲があるが、これは戯曲ではない。)
もはや見る夢は浄土のことばかり、という高徳の僧・志賀寺上人が、美貌の京極の御息所に恋をしてしまう。上人にとってその愛は獲得寸前だった「来世」の返上である。これほどの高徳の僧を迷わせたからには、自分にももはや浄土は望み得ないことであろうと、御息所は愛されることの「地獄」を見る。
このハナシ、実は夏に卒塔婆をやったとき、演出家の宮城さんに「卒塔婆をやるなら読むといいよ。」と勧められた作品だ。一読してまず「なんてヤツ」って思った。それまで、三島の作品を好きにはなれなかったけれど、この男の定義する「愛」とその実現不可能な希求は、深過ぎてなるほど、あんなに短い作品でもものすごいインパクトをもって私を魅了した。(個人的には同じ短編集 「岬にての物語」の中では最後の「月澹荘奇譚」が好きですけどね。何とか舞台化でききないかな~なんて考えてたりして。)
ま、前置きはともかくとして、そんなこともあったので、てっきりこの「志賀寺~」の舞台化は宮城さんが主導?というか発案でやっているのだろうと思っていた。だが、実際に舞台を見るとどうも違っているようだった。プロデュースは、パーカッショニストの加藤訓子さん。小柄な身体で迫力のある演奏。どうやら、主導権は彼女と、作曲家のジェームス・ウッド氏にあるらしい。あとから宮城さんに聞いたところによると、「小鳥のさえずりと同じように、『台詞』もひとつの音楽として捉えられている。」
なるほど、舞台の上では役者(ク・ナウカの江口麻琴さん)が直接言葉を発することはあまりなく、ほとんどが加藤さんの朗読の録音で話が進行していく。音や、独唱がそれに被ってよく聞こえなくなることもある。ことばは「ことば」として扱われておらず、あくまで、音の要素として空間を彩るものだった。彼女の持つExpression同様に声がとても「かわいらしい」ので、初めの頃なんとなく違和感を覚えたが、それが主となり打楽器と共に世界を創り始めると、暫くするうちに慣れてしまった。
上人の恋する御息所の役(といっていいのかどうか)は、英国のソプラノ歌手サラ・レオナルド。舞台奥の一番高いところに立ち、時たまことばとしての意味は持たないであろうと思われる高音の声を発する。私は、この人の扱いが一番「もったいない」と感じた。俳優はその個性的な身体でもって圧倒的な存在感を示していたし、パーカッショニストはこの「物語」にまったく登場しない人物にも関わらず、押しも押されもせぬ「主役」ぶりだったし、その演奏とビビッドにシンクロしながら独自の主張をする「音」も激しい個性をもっていた。その中で、御息所、或いは「美」を体現するものだけが、妙に遠く、かすんでしまっていたように思う。
いずれにしても、非常に印象的で心地のいい、そして凄まじい舞台だった。
「音楽と、演劇と、文学を、順列がつけられないくらい好きな人に送る」というキャッチコピーには胸がときめくが、やはり音楽>演劇>文学の順に観客の満足度には差があったのではないだろうか。私は演劇=文学≧音楽(敢えて言うなれば)なので、今度はこの逆バージョン?宮城さんが主導するものも見てみたいなあ、なんて勝手に思いながら、BankArtを後にした。1Drinkつきの美しいArt作品をみた。という気分であった。
※美しいのひとことにつきる舞台美術。
七宝でできた御簾ごしに御息所がこちらを覗き込むシーンがお気に入り。
横浜BankArt1929にて。
まずこの作品について。三島由紀夫の短編小説「志賀寺上人の恋」の舞台化である。
(三島には数多くの戯曲があるが、これは戯曲ではない。)
もはや見る夢は浄土のことばかり、という高徳の僧・志賀寺上人が、美貌の京極の御息所に恋をしてしまう。上人にとってその愛は獲得寸前だった「来世」の返上である。これほどの高徳の僧を迷わせたからには、自分にももはや浄土は望み得ないことであろうと、御息所は愛されることの「地獄」を見る。
このハナシ、実は夏に卒塔婆をやったとき、演出家の宮城さんに「卒塔婆をやるなら読むといいよ。」と勧められた作品だ。一読してまず「なんてヤツ」って思った。それまで、三島の作品を好きにはなれなかったけれど、この男の定義する「愛」とその実現不可能な希求は、深過ぎてなるほど、あんなに短い作品でもものすごいインパクトをもって私を魅了した。(個人的には同じ短編集 「岬にての物語」の中では最後の「月澹荘奇譚」が好きですけどね。何とか舞台化でききないかな~なんて考えてたりして。)
ま、前置きはともかくとして、そんなこともあったので、てっきりこの「志賀寺~」の舞台化は宮城さんが主導?というか発案でやっているのだろうと思っていた。だが、実際に舞台を見るとどうも違っているようだった。プロデュースは、パーカッショニストの加藤訓子さん。小柄な身体で迫力のある演奏。どうやら、主導権は彼女と、作曲家のジェームス・ウッド氏にあるらしい。あとから宮城さんに聞いたところによると、「小鳥のさえずりと同じように、『台詞』もひとつの音楽として捉えられている。」
なるほど、舞台の上では役者(ク・ナウカの江口麻琴さん)が直接言葉を発することはあまりなく、ほとんどが加藤さんの朗読の録音で話が進行していく。音や、独唱がそれに被ってよく聞こえなくなることもある。ことばは「ことば」として扱われておらず、あくまで、音の要素として空間を彩るものだった。彼女の持つExpression同様に声がとても「かわいらしい」ので、初めの頃なんとなく違和感を覚えたが、それが主となり打楽器と共に世界を創り始めると、暫くするうちに慣れてしまった。
上人の恋する御息所の役(といっていいのかどうか)は、英国のソプラノ歌手サラ・レオナルド。舞台奥の一番高いところに立ち、時たまことばとしての意味は持たないであろうと思われる高音の声を発する。私は、この人の扱いが一番「もったいない」と感じた。俳優はその個性的な身体でもって圧倒的な存在感を示していたし、パーカッショニストはこの「物語」にまったく登場しない人物にも関わらず、押しも押されもせぬ「主役」ぶりだったし、その演奏とビビッドにシンクロしながら独自の主張をする「音」も激しい個性をもっていた。その中で、御息所、或いは「美」を体現するものだけが、妙に遠く、かすんでしまっていたように思う。
いずれにしても、非常に印象的で心地のいい、そして凄まじい舞台だった。
「音楽と、演劇と、文学を、順列がつけられないくらい好きな人に送る」というキャッチコピーには胸がときめくが、やはり音楽>演劇>文学の順に観客の満足度には差があったのではないだろうか。私は演劇=文学≧音楽(敢えて言うなれば)なので、今度はこの逆バージョン?宮城さんが主導するものも見てみたいなあ、なんて勝手に思いながら、BankArtを後にした。1Drinkつきの美しいArt作品をみた。という気分であった。
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by uronna | 2005-02-07 00:20 | 劇評、書評、映画評
演劇はあらゆるアートのなかで最も遅い、でも強いんじゃないかなと思っている芸大出身の演出家Ashと、愉快な俳優/アーティストたちの奮闘の記録…かもしれない。稽古中は稽古場日誌になるよ。
by uronna
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ウロンナフォークスの公演は終了しました。次回公演はタイムカプセルを掘り出す頃かもしれません。(胡乱だなあ)
ク・ナウカの役者陣によるムネモシュネーブログも是非観てくださいね。
東南アジア青年の船関連の話は続・SSEAYPにて公開中!こちらにも遊びにきてね。
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