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「コーカサスの白墨の輪」

2月13日(日)

世田谷パブリックシアターにてマチネ。
松たか子主演、串田和美演出。
Keywords: グルジアワイン・シャッフル・観客参加

「子供の手を二人の母親が引っ張って、子供の痛みを考えて先に手を離した方が本当の母として認められる」
この話、誰もが知っている話だとは思うけれど原典を知っている人ってそう多くはないのではないか。私も恥ずかしながら、タイトルを見ただけでブレヒトのこの芝居の内容をこの話につなげることができていなかった一人だ。始まってすぐに、ああ、そうだったのかと思った。

つくりは円形。パブリックシアターの舞台も今日は、観客席となっている。開演前も役者さんたちが舞台となっている真ん中のスペースでパンフレットを売ったりして、「観客参加」の匂いをぷんぷんさせている。時刻になると、役者さんが中央に集まり、アカペラで声を合わせて歌い出して、開演。

特筆すべきは、話の進行役になっている朝比奈さん。役者であると同時に音楽監督。そのプレセンスは非常に味があって、たまにさりげなく指揮をしたりしているんだけど、その動きも完全に役者のものである。話を進める歌声もすばらしく、まさにこの芝居のキーマン。

松たか子、鞠谷友子の歌や演技は今さらいうまでもなく良い。そしてこの芝居に限っては、串田さんも有りなんじゃないの、と思った。演技をやめて演出に専念しろ、とか色々かかれたり言われたりしている串田さんだけど、演技は本当に好きなんだろうなあ。自分が出るために演出しているんだと思うから、今回のように役を選び見せ方を選べば、成立するんじゃないか。まあ、普通は「主役」でも何でもない役を主役に仕立てあげ、目立ってしまっているのは「出たがり」のそしりを免れないかもしれないけれど、その危うさが面白ければ観客としては満足だ。

一番この演出で成功しているなあ、と思ったのは、外国人役者たちの起用である。
役者が売りにきたので思わず購入してしまったパンフでチェックすると、男女合わせて8人の外国人俳優が出演している。彼等にどのように話させるのか、という興味があったのだが、見事な「カタコト日本語」であった。これには頭を殴られたような衝撃があった。今、日本で、ブレヒトを上演する、ということに串田さんがしっかりとしたビジョンをもっているということを感じた。ブレヒトの言葉を現代に伝えるのには、滑らかな発話ではだめだし、歌にのせたところで「異化効果」は起きない気がしていた。それならばこのゴツゴツとした、たまに意味を取り違えそうになるくらいの台詞によって感じさせられる違和感こそ、それにとってかわるものなのではないか?

力の抜けた、それこそ酔っぱらったようないい心地のうちに、芝居は幕を閉じた。(串田さんにいたってはほんとに飲んでたんじゃないか?(笑))
興奮につつまれてワーッと観る芝居の良さとは、また違うものがある。こんなに力が抜けてるのに、色々考えさせてもらえる芝居だったと思う。

それにしても休憩時間に舞台上で販売していたグルジアのワイン、美味しかったなあ・・・。銘柄をチェックしてこなかったのは不覚である。どなたか、チェックした方がいたら教えて下さい。
by uronna | 2005-02-14 02:54 | 劇評、書評、映画評

復活。


by kawasaki Alice