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初日


無事幕が開きました!

今日は直前まで最終チェック。
美術、照明、音響…テクニカルチェックの為のリハだったはずが、ユディは一度もとめない…。横にいる私は、今とめなくていいのかな、とユディの方を盗み見る。ユディは照明や音などをかえたい部分があると、自然と手の動きや顔にそれが出る。私はこの6週間で学んだそれを、自分のノートに書き留めていく。ユディが通す気になったのなら、これはもはやテクリハではなくランスルーなのだ。それは役者にとっての思いやりと、パフォーマンスの幕開けぎりぎりまでの妥協のない進化への渇望がまざった、ユディの選択だった。私はできることをするだけだ。
照明さんもそれを理解して、後から私が書き留めたノートを信頼して変更に応じてくれる。スピーカーの音質にも、心配なところがあったのだけれど、音響のアドバイザーについている方がきてくれて、直前まで対応してくれていた。

ユディの不思議なところは、こうやっていつの間にか周りが惜しみない協力を与えてしまう点だ。ジョグジャの地震に際しても、地元の人々が「最後までやってこい」と励ましてくれたというが、それが本当に納得できる。人柄、そしてたぶん彼の生き方そのものに惹かれて、おおくの人が彼とガラシを応援しているのだろう。
今回、そんな演出家の助手として、そして脚本家のひとりとして、この作品を共につくることができたことが、本当に幸せだと思う。今からこんなことを書くと、舞台が終わった時に書くことがなくなるので(^^;)このあたりにしておくが、とにかく、初日を迎えて自分の中にわき上がってきた感情がこれなので、素直に綴っておく。なんせ、昨日もスズナリで新しい台詞を書いたりしていた。女優陣に「井上ひさ子」とかからかわれていたが、いやいや、脚本ありきの舞台ではないのだから、これもある意味普通の姿なのだろう。役者も即興なら、作家も即興で物語を書き、そしてそれをコディファイする作業をしてきたのだから。こんな珍しい体験をさせてくれるプロダクションには、そう簡単に出会えないのではないかと思う。

すべてのチェックを終えて、楽屋入り時刻となったとき、ユディが言った。
「お祈りしたい気分なんだ。日本のみなさんの習慣ではどうやるのかわからないけれど、みんなで一緒に祈りたい。私たちの作品のために、そしてジョグジャカルタのために」
好きなやり方でいい、といわれ、日本人もインドネシア人もめいめいに目を閉じたり、手を合わせたり、それぞれの「祈り」をする。私も目を閉じて、この6週間に起きたことをいろいろと考えていた。記憶をたよりに。ディスカッションや、インプロから生まれ、また消えていったシーンや台詞のことを考えた。初めてインプロがしっくりいき出したときのユディの満面の笑顔を思いだした。ジョグジャでの地震が起きたとき、宮城さんがユディと真剣にはなしていたときの不安感を思い出した。二次大戦についてウゴと忌憚なく意見を言い合い過ぎてさすがに喧嘩になったときのことを思い出した…。
ふと、隣の気配がかわったのを感じて(またもや)ユディを盗み見ると、この人は泣いていた。。。

長くなりましたが、とにかく初日があきました!
一週間、まだまだムネモシュネーは進化します。どうかお見逃しなきように!

初日_a0015614_234345.jpg
初日終了後、劇場乾杯でようやく見られたユディの笑顔(^^)
女優の野原さんと。

ash_yamaneco
by uronna | 2006-06-11 23:43 | ムネモシュネー稽古場日記

復活。


by kawasaki Alice