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女優Aの場合

8月28日(土)

自分も色々反省しきりだったここ一週間の稽古。
今日は、絶対に役者に徒労感を与えるような稽古をしてはいけない。前日図らずも、帰ってすぐにソファになだれ込んだまま寝てしまったので、いつもに比べてだいぶ頭の中もすっきりしている。起きるとすぐにシャワーを浴びて、取るもの取らずに森下に向かう。途中のミスドで戦略を練る。曲を聴きながら振付けも考えてノートに書き付ける。

結局稽古場に着いたのはいつもと同じ時間だったが、稽古開始からはプロローグのダンスシーンの振付けを休みなく行う。出来るようになるまで何度も繰り返し、全員の振りが揃ったところでようやく休憩。時計は2時になろうとしていた。

15分の休憩後、今度は一場の稽古。ユニゾンで話すところが合わないので何度も繰り返す。ぴったり合うようになるまでOKは出さない。これは、頭で考える演技ではないのである。一緒に舞台に乗っている他の役者の息づかいをよく聞いて、感覚を研ぎすましていなければできないのだ。それには徹底した集中力が必要だし、そのためにはだれる暇を役者に与えてはいけない。
揃うまでやっていたら、稽古終了の4時になってしまった。
それでも、役者のフィードバックは「今日は稽古が進んだ!すごいいい感じだった!」というものが多かった。私も、終わったときいつもよりもずっと充実感を感じていた。

ここで、殻を破ったと思う程私はうぬぼれてはいない。
一つの課題をクリアしたと思ったら、また次の問題が起きてくる。まるで才能のないプログラマがコーディングしたRPGのような世界なのだ、演劇の現場というところは。
熟練した役者にいわれたことだが、「Ashleycat, 役者も演出家もそうだけど、やればやるほど、『確実なこと』は減ってくるんだよ。」
その意味を考えながら、兜の緒を締めなきゃと思うAshleycatである。

皆の体力を考えて日曜日を休みにしたので、今日は飲み会にすればという声もあがっていた。私は是非そうするように皆に伝え、私自身はTPTでまだ見ていなかったアリの「シカゴの性倒錯」の観劇に向かった。
女優の一人が仕切ってくれて、てっきり皆は飲んでいるものだと思っていた。

観劇後に、会場となっていた中華飯店に「まだみんないるのかな。」と覗きにいってみると、幹事の女優と、もう一人の男優が苦笑いをしながら座っていた。どうやら俳優たち、女優たちのほとんどは自主稽古に熱が入り過ぎて、飲み会に集まらなかったのだそうだ。幹事役の女優Aは怒髪天を衝く勢いで怒っている。確かに、裏切られた感はあったのかもしれないが、私としては皆の熱意に感心し、ちょっと嬉しかった。女優Aを宥めながらビールを一杯もらい、ちょっとお腹が満たされたところで店を出る。

葵チームが近くで飲んでいるから、行くと行って聞かない彼女はもうすでに目が据わっていて、このままそこに行かせてはどんなことになるかちょっと心配だったので私も行くことに。(まあ、実際少し飲み足りなかったし)
しかし、そこで女優Aは感情を爆発させてしまった。

葵チームには、「卒塔婆チームめ、うまくいっていないな。ふふふ」という印象を覿面に与えてしまっただろうな。それならそれでいい。事実は違うのだから。そう思われていたって何の不都合もない。
彼女を宥めつつ、新宿まで送る。葵の演出家には、「Ashleycat 甘いね。あたしだったら放っておくよ。」といわれてしまった。正直言えば、葵チームに迷惑をかけない為にも放置プレイはできなかっただけなのだが。

しかしそれだけでもない。
このひとは、人間としてとても「いい子」だ。私は彼女に色々助けられたと思う。
でも、彼女が制作っぽいことを沢山してくれているから、私が彼女をキャスティングで贔屓するなんてことはありえない。私はあなたの、演技を見たいんだ。女優としての。
誰の場合でも泣き言は一度だけは聞こうと思う。自分だって役者をやっていた時には同じような悩みを持っていたから。でも、二度目はないよ。皆成長しようとしているんだ。本気で女優になりたいなら、どうか甘えた考え方は捨てて稽古場で真剣勝負をして欲しい。
by uronna | 2004-08-29 23:25 | 舞台のおはなし

復活。


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