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宝塚と劇団四季

a0015614_183610.jpg6月25日(金)
2限にとっている大学院の講義で知り合った友達が、今日の午後に慶応の三田校舎で宝塚演出家の小池修一郎が講演をするので行くという。そういえば、小池さんは塾員だった。小池さんには2年くらい前にお会いして講義で使う脚本を書かせてもらったことがある。久しぶりにあの「小池パワー」に会いたいし、古巣が懐かしくもある。で、行くことにした。今夜はもともと劇団四季の「マンマ・ミーア」を観劇する予定になっていたのだが、日本を代表するショウビジネス成功者の講演と公演を梯子だなんて、最近の私を知っている人間が知ったら目を丸くするだろう。

小池さんの講義は北校舎ホールで行われた。こんなホールがあったなんて在学中は知らなかったぞ。話の内容はほとんど「エリザベート」。この講演は一般公開されているので、あたりさわりのない話ばかりという印象。終演後に、北館カフェテリアでパーティ。久しぶりに話したけど、やっぱり人の話はあまりきいていない。かと思うと自分のカメラをもって、「一緒に写真撮りましょう」と話しかけてくる。あいかわらず落ち着かないひとだなあ。大きな写真もあったけど、肖像権の問題もあるので、今回は遠景のみ。

さて、「マンマ・ミーア!」の方だ。今まで観ていなかったのにはまあ、それなりの理由がある。芸大に入ってからというもの、「アート」と「エンターテイメント」の違いについてずっと考えさせられていた。なぜいきなり歌ったり踊ったりするのか。ミュージカルは殆どが「エンターテイメント」として分類されて、オペラは「アート」と呼ばれる。今、一番求められている舞台とはいったいどういうものなのか、それを知る為に徹底的に今まで観ていなかったストレートプレイやダンスの公演を観に行った。ハッキリ言ってまったく面白くないものも沢山あったけど、モノを見る目はそれなりに培われてしまった。その結果、わかったことがある。人間は、感動したり気分が高揚すると歌い出したり、踊り出したりする生き物で、そういう意味ではミュージカルという表現方法はちっとも不自然ではないということだ。「最先端」ということと、「求められている」ことは違う。劇団四季も、宝塚も、自分達にしかできないことをやったからあれだけの支持を得たのだ。客が付いて、巨大なお金が動くようになれば、観客に迎合しなければならなくなることもある。そうして、商業的に成功した劇団は「エンターテイメント」だと揶揄されるようになる。それらの劇団を乗り越える為に、多くの「表現者」たちが先進的なことをして、認められるとそれが「アーティスティック」と言われる。それだけのことだ。
だから、色々考え過ぎて前に進めなくなるのが一番ばからしいのだ。表現者にとっては。

なんだか、マンマ・ミーアの話がかけなくなってしまったが、内容はとても良かった。アイディアとストーリーの勝利だ。ABBAの曲は今さら言うまでもなく愛すべきものだから、新たに驚くことはなかったけれども。
電通劇場「海」の出入り口前にあるレストランで久しぶりの友達とワインを頂いたが、このレストランがよかった。こちらの話は最近始めた楽天日記でのワイン話に書くことにします。分量多すぎですからね。ごめんなさい。
トラックバック先をみてね。



マンマ・ミーア!サントラ
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by uronna | 2004-06-30 18:37 | 劇評、書評、映画評

三上博史のヘドウィグにやられた

a0015614_165542.jpg6月24日(木)
新宿厚生年金会館にて、三上博史主演の日本語版「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を観た。パルコ劇場でやっていたのを自分の芝居の稽古で見逃していたので、追加公演の今回、どうしても観ておきたかった。当然チケットはソルドアウト、ヤフオクでも倍近い値段がついていたので、木曜の自主休講を利用して開演3時間前に会場へ。しかし既に私の前に20人近いヒトの列。おお、さすがに人気が高いなあ。っていうか、無理かも。と思いながらも頭のなかで関係者チケットの数を予想し、並び続けることに。結果、3時間後に当日券ゲット。連れの分も。諦めて帰ってしまった私の前に並んでいた数名の方、この手の公演は絶対に関係者チケットを20枚以上非常用にとってあるので、キャンセル待ちがでる確率は高いのですよ。

会場には、ヘドウィグの真似をした派手な扮装のお客さんがあふれている。2丁目のほうから流れてきたのかしら。三上博史扮するヘドウィグの登場は上手扉から。途端に観客総立ち、大拍手、大歓声。重低音がズンズン下腹部に響いてくる。映画のヘドウィグに比べ、デフォルトでは男に見えるヘドウィグだが、その分変人ぶり爆裂、存在感絶大。このミュージカルは、ほとんど主役の独白と歌だけで話がすすんでいく珍しい舞台だ。ミュージカルというよりはロックコンサートのノリであるかもしれない。しかし、これがロックコンサートと一線を画すのはやはり主演三上博史の演技力だ。声量はあるが。そんなに歌が上手いわけではない三上博史の歌にあれだけ観客が惹き付けられてしまうのは、歌に入るまでの三上の独白があまりに鋭く切なく、台詞の一つ一つが観るものの胸に突き刺さるからである。ストーリーの独特さと上手さもあるが、ジョン・C・ミッチェルが自作自演したオフブロードウェイ版とも、映画版とも全く異なるヘドウィグ像を作り出した三上博史の熱演にスタンディングオベーションだ。

劇中歌もとにかく良いものばかりだ。こればかりはやはり、日本語でなく英語で聴いた方がいいと思うが・・・。私はサントラを購入し最近毎日聴いている。
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ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ
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by uronna | 2004-06-30 16:56 | 劇評、書評、映画評

友、来タリテ夜思フ

a0015614_161038.jpg6月23日(水)
大学時代の(今も大学時代か、ややこしい。)友人が遊びに来た。
今日は彼女の誕生日である。
湘南台の家では、いつも彼女ともう一人の女友達と互いの誕生日を祝いあっていた。8年経った今でも、まったく変らない。かたや汐留OL、かたや取手のしがない藝術系大学生、「思へば遠くへきたもんだ」此の先まだまだ何時までか、生きてゆくのであらうけど・・・。いやいや、中也の詩など思い出して感傷にひたっている場合ではない。あの日々は確かに輝いていた。全てが可能(だと思っていた)からね。今だって輝きは同じだが・・・今は輝きを眩しく思わない。太陽の光に目が眩んだまま進んでいくのではなく、光が照らす先をしっかりと見つめられる目を手に入れた。きっとあなたもそうでしょう。いや、あなたはあの頃からしっかりと地に足をつけていたかも。そんなあなたのお陰でわたしは「此の先まだまだ生きてゆく」ことができるのかも。

Happy Birthday♪あなたがわたしと同じ時代に生きていてくれることにとても感謝している。
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by uronna | 2004-06-30 16:11 | その他のおしゃべり

雨の日は読書を「博士の愛した数式」

a0015614_225937.jpg6月21日(月)
本は呼ぶ。これは本当だ。
とくにあてもなく久しぶりに本屋に足を向けた私が、5歩も店舗内を進まないうちにその本は呼びかけて来た。けっこう大声で。めったに本を買わない私が本を手に取ってレジに進むのはこういう時だ。そして、この呼び声に従って私の本棚にやってきた本はまず、わたしをがっかりさせたことはない。
さて、「博士の愛した数式」と題名のついたこの本は、本屋大賞で一位をとった、という帯がついていて、本屋の一番目立つところにおいてあるにも関わらず、なんとも清楚なたたずまいで(前の方で自己主張をしている「世界の真ん中でなんとか」とか「負け犬のなんとか」とかに比べてずいぶん影が薄くて)、それでいてちゃんと自分の居場所は守っているような力強さがあり、一目でわたしはこの本が呼び声の主だと気が付いた。

これから読む方の為に内容はここで明かすわけにはいかないが、数学や数字が苦手な人がそれだけで敬遠するような本ではないことを言っておこう。むしろ、逆である。主人公の家政婦は数学の知識などないシングルマザー。数字や数式の美しさなんてことを全く考えたことがなかった彼女が、新しく仕事をすることになった家に住んでいたのが天才数学者の「博士」だった。主人公と幼い息子が、「記憶力」を失った博士から教わったものは・・・。

静謐な日常の中の驚きと感動を、美しく描ける作家に久しぶりにであった気がした。必読。自分の本棚にいてくれるのが嬉しい一冊だ。
博士の愛した数式 ( 著者: 小川洋子 | 出版社: 新潮社 )
博士の愛した数式
ブラフマンの埋葬
妊娠カレンダー文春文庫
密やかな結晶講談社文庫
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by uronna | 2004-06-27 22:47 | 劇評、書評、映画評

歌謡曲で踊った話。

a0015614_32720.jpg6月20日(日)

なんか、一週間遅れで日記?なんか書いてると夏休みの日記を8月31日にまとめて書いていたことを思い出すなあ。

さて、前回書いたAAFのクロージングパーティのお手伝いに、またもや門仲天井ホールに呼び出された。この日は、これも前回ちょっと書いた水上バスで踊っていたダンサーの「たかぎまゆ」によるワークショップが行われるというので、折角だから早めに行って参加することに。

まゆさん、今日はナチュラルメイク。
参加者には、結構ご年配の男性やすごく小さい子までいる。どうやらパンフに「初心者大歓迎」と書いてあったらしい。そのわりにはかなりハイレベルなストレッチをやったりしてたけど。ストレッチの間やたら歌謡曲が流れるので、「もしや」と思っていると、案の定。後半の振付けレッスンは郷ひろみソングだ。しかも前奏にはなぜか「必殺仕事人」ご丁寧に「ナカムラモンドデゴザイマス」まで。振りも単純とは言えないが、個性的な動きが多くて面白い。老若男女、ひろみゴーの歌にあわせて首を振ったり腰を振ったり。うふふ。楽しい。

あっという間に2時間は過ぎ、最後にみんなで出来あがった作品を踊って終了。こんな気軽でお得なワークショップ、他にないんじゃないか?
私はクロージングパーティの準備要員に早変わりして、縁台や食事を運ぶ。
オープニングに比べるとだいぶ人もまばらで関係者の顔ばかりが目に付くが、下町っ子は意に関せず乾杯!
専属のオケがきて、音楽が盛り上がってくると支配人の黒崎さんが踊り始めた。おちゃめな人。この人間模様と空間、悪くない。


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by uronna | 2004-06-26 03:28 | 舞台のおはなし

東京を全部観るツアー

a0015614_181353.jpg6月12日(日)
ちょっと前の話にさかのぼる。先月ウロンナの公演会場としてお世話になった門仲天井ホールで、アサヒ・アート・フェスティバルというイベントが6月中ずっと行われていた。ここの支配人の黒崎さんはまさに「下町のおばさま」というチャキチャキしたお方で、Ashleycat「今回はほんとうにお世話になりました。」黒崎さん「あらー、いいのよ、どうせこっちも手伝ってもらうから。じゃあね、今度の6月の12日だけどね・・・」Ashleycat「はあ」という感じで自動的にお手伝い要員として借り出されることが決まっていたのであった。

前置きが長くなったけど、そんなわけで「東京を全部観るツアー」の記録係をやることになったのです。ビデオ担いで深川から向島、途中地下鉄もつかうけどとにかく、歩く、歩く、歩く。晴天好きの私もさすがに「すこしは翳ってくれい」と思う。現代美術製作所ではナフタリンでできた蝶々の展示が印象に残る。雨水利用の研究所?所長のおじさんの「ひ」と「し」が聴き取れない。「バングラデシュでは井戸掘り過ぎて、しそが混じった層の水をのんじゃってるんだ」(「し・・・しそっすか?」)ヒ素でした。
それからまたひたすら歩き、京島で学生たちがやっているアートカフェ「Rice+」を通りすぎ(笑)、やっぱりアートギャラリーとして営業しているカレー屋さんに到着。やっとお昼。すごく風情のあるたたずまいで、しかもカレーが激ウマ!押上駅からかなりあるくみたいだけど、我々は駅なんか通らずにもっと歩いていたのできっと平気。写真を頼りに探してみてね。
元気が出たところで、今度は小山田徹さんの「しあわせのしわよせ」展を観て、片桐グラスファクトリーでガラスを吹いて(汗がぶわっとでた。。。)、浅草まで歩いて、水上バスにのり、たかぎまゆのダンスパフォーマンスをみながら生ビールを一杯。うーんんん。最高。たかぎまゆは「ロリロリ、ゴージャス、ラブリー」を絵に描いたような格好をして踊っていた。かわいい。あっというまに日の出桟橋に到着。

死ぬ程働いた気がしたが、不思議と疲れはなかった。こんな機会でもなければ東京の下町をあんなに練り歩くことなんかないだろう。「東京を全部観るツアー」というのは嘘だと思ったが、(不可能だぜ、なんでこんな名前つけるかな。)東京の東のハジッコの、いつも首都高から見下ろして過ぎてしまっていた町の顔をじっくりみられたのはとても有意義だったと思う。黒崎さん、感謝!
教訓:ホールは安く借りて身体で返せ。


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by uronna | 2004-06-23 18:15 | 舞台のおはなし

原点、そこは武家屋敷

a0015614_35238.jpg6月19日(土)

 精神薄弱者のひとたちが集団生活をしている日の出太陽の家で、Upの新人研修があった。私も出身者のひとりとして参加する。今年から活動を再開するUpは、私がいた頃のUpとは大きく姿を変えた。三本柱のひとつでもあり、私にとってはメインの柱だった「Performing Arts」が削られているのだ。名前もWorldSmartProgramとなり、より「教育」分野に焦点を当てた活動になっている。
日の出太陽の家の武家屋敷には、私も渡米前に来て出身者の人からいろいろアドバイスを貰ったものだ。Community Service活動の一貫として、施設の入所者との交流会があるのだが、私の親より年上の人も多い入所者と、どのようにコミュニケーションをとったらいいのかわからず随分戸惑ったのを覚えている。

 この日は、昼に用事を済ませ実家から車で行ったのだが、交流会にギリギリセーフ、という感じで滑り込んだ。見回すと、見覚えのある顔が沢山並んでいる。「あのひとは長渕剛の歌が好きで、それが流れるとマイクを握って放さなくなるんだ。」「あのひとは、ちょっと恥ずかしがりやだけど踊るのが好きだったな。」向こうは勿論こちらの顔なんか覚えていないだろう。でも私は懐かしかった。

ピアノとギターに併せて、アップのミュージカルナンバーが次々流れる。私たちが歌うと、彼等も一緒に歌ってくれる。のってくると、踊る、タンバリンをならす、笑う、泣く、叫ぶ。もうめちゃくちゃ。底抜けに楽しい。
これほど一緒にいて楽しい人たちを、7年前のわたしはどうして恐れていたんだろう。武家屋敷に初めて足を踏み入れた時のわたしの心は、いまよりずっと閉じていたんだろう。自分のことしか見えてなくて、天をも恐れぬ自信家だった。なんでもできると思ってたからなあ、実際。

7年の間にはいろいろなことがあって、鼻柱も何度も折られ、もう今は自信家なんかじゃないけれど、自分の夢は相変わらず追っている。成長したかどうかはわからないけれどもう皆を怖がったりしない。

またここに帰って来たよ。
きっとまた帰って来るよ。

武家屋敷には、終わらない歌声がずっとずっと谺していた。

(写真は交流会後のミーティング風景)
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by uronna | 2004-06-23 03:53 | その他のおしゃべり

「ちぎれるほど愛して」

6月18日

友人がベターポーヅの制作を手伝っているということで、案内が来たので観に行くことにした。他所様の芝居を見るのは1ヶ月ぶりくらいだろうか。

会場は新宿シアタートップス。ここでは過去にラッパ屋の「裸でスキップ」、自転車キンクリートの「人形の家」、オッホの「ライフ何とかテクノロジー(笑」を観ているが、題名を忘れてしまったものはともかくとして、この劇場でやる芝居は面白いものが多いし、値段もまあ小劇場にしては高い方か。

ベターポーヅは気になる劇団ではあったが、まだ観たことが無かった。よって、期待半分、不安半分で友人を誘って観劇。実は友人との飲みのほうが先に決まっていたので誘った手前面白い内容であって欲しいとの願いもこめて劇場入り。
席には青い風船が置いてあり、入口でもらったプラスチックのつまようじでそれを破裂させないと席につけない。バン、バンと派手な音が劇場のあちこちから響き、これはよほど劇中にこの音か風船を破裂させた余韻を利用した演出があるのかとしぼんだ風船をよそに期待をふくらます。

しかしながら、結果から言うと、なんともちぐはぐな内容であった。
まず風船、何の意味があったのか。
爪楊枝で西島がチョコレートを食べさせる客弄りのためだけにあんなにうるさい思いをさせたのか。青い色は青いバナナとは何の関係もなかったのか。

振りつけ:山田うん。これには多少期待していたが、やはり期待するほうが間違いだったかな。彼女の振り付けをものにしている役者さんはひとりもいなかった気がする。

ベタポのほかの芝居を観ていないのでなんともいえないのだが、この劇団は毎回役者の名前をそのまま役名に使うのだろうか?(だとしたらこの内輪ムードも納得できるが。)

ラブストーリーとは言うが、これはラブストーリーではなく「ラブ」をお題にしたコントだ。

全くつまらないわけではない。笑える箇所もたくさんある。
それでも、これに3000円払うことはお金の半分を赤い羽根共同募金に寄付したのと同様であると思ってしまう。。

やりたいことはなんとなくわかるが、今のままでは次回公演を観たいとはまったく思わない。やりたいことを詰め込むとこういうことになるのだ、ということを自分も痛い思いをしながら反芻できた90分であった。
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by uronna | 2004-06-19 02:02 | 劇評、書評、映画評

Blue in the Face

a0015614_42035.jpg6月16日(水)
芸術批評演習の課題で映画評を書いた、のを書き直した。
結構面白い映画だったのでここに載せます。ちょい長め。

ブルックリンの煙草屋で煙にまかれる。

 ブルー・イン・ザ・フェイスは、ブルックリンに住み、ブルックリンを愛する登場人物たちによって綴られる下町情緒コラージュともいうべき作品だ。
90以上の人種が寄り集まり、貧乏を託ちながら日常を送る雑多な町、ブルックリン。そこは、多くの観光客を集め世界へ未来へと扉を開くニューヨークの中にありながら、下町気質を金科玉条に生きる人々が昔を懐かしみながら暮らす吹きだまりの町だ。米国全土をを席巻するかのような嫌煙文化もどこ吹く風、人々は今日もそれぞれに必要なものを求めてブルックリンの片隅にあるオーギーの煙草屋にやってくる。

ブルックリン出身のロック歌手ルー・リードがとぼけた顔で町を語り、かつてこの町にあった野球チームの思い出話をする。伝説のヒーロー、ジャッキー・ロビンソンの活躍した当時や、球場が解体された時の映像が随所に挟まれ、ある種ドキュメンタリーのような様相を呈するシーンもある。観進めていくうちにこれらが、周到に用意された「ドキュメンタリーもどき」であることは判明するのだが、その時には既に我々は作り手の術中に落ちている。即ち、身体に悪いとわかっていながら煙草に手を伸ばしてしまう愛煙家のように、この映画をここでお仕舞にすることができなくなっている。文字どおり、「顔が真っ青」になるまで喋りまくる登場人物たちの話を最後まで聴こうとしてしまう。

ではこの映画の持つアディクティブな要素とは何なのか。
マイケル・J・フォックス扮するアンケート会社の社員が、タバコ屋の常連のイタリア系黒人に「トイレで自分のしたものを眺めるか?」「何ドルで自分のウンコを食べるか?」などと意味のない質問を浴びせかけるシーンがある。これはマイケルの即興とギャグセンスで成り立っているシーンで、改めてマイケルの役者としての魅力を見た気がした。マドンナ扮する電報配達嬢が歌う電報を届けるシーンがある。これもやはりマドンナ本人の振り付けによる遊び心満載の(というより遊び心しかない)シーンで、その意表をついた登場に見ている方はまず呆気にとられ、次には笑うしかない。主役を張れる役者を隠し球のように使い、観客を翻弄する、作り手がいかに伊達と酔狂でこの映画を作っているのかということを見せられる度に、こちらも妙に肩の力が抜けてくる。この極上のリラックス感は煙草と同じだ。まさに癖になる!

ストーリーはあることにはあるのだが、それは煙草の横に書いてある注意書きと同じで便宜上存在しているのだと考えられたい。展開を追うよりも全体にちりばめられたアイロニックなギャグやブルックリンという町のエッセンスを楽しみながら「斜め観」するのがこの映画の正しい見方だと私は理解した。未来をのぞく眼鏡も、時計売りのラップも、新案特許のビニール取り器も、あってもおかしくないのだ。オーギーの煙草屋にたちこめる煙の中にはきっと存在しているのだろう。その煙にまかれるためだけにブルックリンに行くのも悪くない。
珍しく一本も煙草を吸わずに見終ったビデオを巻き戻しながら、そう思った。
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by uronna | 2004-06-18 04:09 | 劇評、書評、映画評

25分で水を飲む

a0015614_14510.jpg6月15日(火)
今日は5月、6月とプロジェクトで「演技指導」を担当して下さった女優の鈴木理江子さんによる最終レッスン。
普段の10倍くらいの速度で歩き、出会い、何かが起きる無言の即興をやってきたが、いままでの集大成として、「水を飲む」即興演技をする。

この「速度」というものはとても面白いもので、演技をしている方は気が付かないが、ワンシーン終わると平気で1時間以上経っていたりするのである。身体の隅々まで神経を感じてひたすら集中しているからだろうか。こちらにはどうしても20分くらいにしか思えない。まるで血液の循環速度まで10倍に落ちたようだ。
普通の速度で即興をすると、どうしても他者やモノとの関係性を強引に結び付けてしまいがちだが、この速度で動いていると目を見合わせただけでも自然に関係ができていく。この時自分の行動を決めてかかっては駄目で、あくまで周りの状況に応じてどんな風にでも動いていけるのがこの「10倍時間即興」の醍醐味なのである。

ふたつの椅子の間に水の入ったグラスが置いてある。二人の演技者が両サイドからその水を求めてやって来て、水を飲む。それだけである。移動距離は3m程。普通の時間でやったら2分くらいで終わってしまう演技だ。ゆっくりと、頭からつま先まで今どのような動きをしているのか考えながら歩く。ようやく椅子にたどり着き、向こうから来た役者と目が合う。座ろうと言われた気がする。ゆっくり腰をおろしていく。ほぼ同時に水をとろうとして、彼女と又目が合う。彼女の表情から、ひょっとしたらこの水は怪しいのではないかと思う。喉がかわいたけど飲んではいけないのかもしれないと思う。彼女の様子をうかがう。彼女は恐る恐るグラスに口をつけて、ごくりと水を飲んだ。安心する。こちらもグラスをあげる。水は物理的な速度で喉を落ちて行き、そのギャップが新鮮で面白い。10倍かけて余韻を楽しむ。美味しい。気持ち良くなってもっと長居したくなるが、彼女が立ち上がりこちらを見る。帰らなければいけないのか、と思う。後ろ髪をひかれる思いでゆっくりともと来た道へ戻る。

見ていた人には、服毒決闘をしているふたりに見えたらしい(笑
ちなみに、もう一組の演技は私には公園にきたおじさんと近所の子供に見えた。
無言だけに、想像力がふくらみ様々なストーリーが観ている方にも喚起される。理江子さんの指導はとてもわかりやすくて実践的で面白かった。インプロをもっと取り入れていろいろな遊びができると思った。
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by uronna | 2004-06-16 14:06 | 舞台のおはなし

復活。


by kawasaki Alice
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