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『王女メデイア』のすごさ

ク・ナウカの王女メデイアという作品についておさらいいたします。

クナウカHPにあるように、この作品はク・ナウカの代表作です。
ク・ナウカの手法「二人一役」が見事に「手法」として確立したこの作品。
ストーリーはこう。

コルキス(現在のグルジア周辺)の王女メデイアは、ギリシャの英雄イアソンと恋に落ち、彼の手助けをして自分の祖国の宝を奪わせしめる。メデイアには神通力のような不思議な力が備わっていたために、イアソンは幾度もの難関を越えることができた。だがイアソンは故国に凱旋することができず、ふたりはコリントス(ギリシャの都市)に身を寄せる。そこでは領主のクレオンがイアソンを気に入り、自分の娘との縁談を進めようとする。イアソンは次第にメデイアの激しい気性と魔力を恐れるようになっており、縁談をを受け入れようとする。メデイアは夫の裏切りを許さず、新妻に毒を仕込んだ衣装を送りその親の領主ともども呪い殺し、更にイアソンの心に二度と立ち直れない打撃を与えるため、イアソンとの間にもうけた息子をも自ら殺す。

…なんという壮絶な話。

初めて本を読んだときには、どうしてメデイアが息子を殺さなければいけないのかわからなかった。っていうか、夫が浮気したくらいで自分の子供殺すか普通!?本当に面白いんだろうか、こんな戯曲…とか思っていた。

それなのに。

ク・ナウカのメデイアを見ていると、この話が妙にするすると納得できる。
ああ、こんな時なら女は自分の息子を殺すかもしれないんだな、と。
もちろんその行為を認めるという意味ではない。
理性を超えたところで、その行動が至極自然なもののように思えてしまう。そして、そこに至るまでのメデイアの葛藤に、観客の心はわしづかみにされともに揺さぶられてしまう。そして子殺しのシーンでは、誰もが息をつめてその行為に至らざるを得なかったメデイアの悲劇を見守るのだ。

何千年も前にかかれたこの戯曲を、今これだけ新鮮に、そして身近な問題として妻と夫の関係、そして息子と母の関係…いいかえれば、家族のかたち、というようなものに勝手に観客の側が受け取ることが出来、いい意味で卑小な置換を自分の心の中で行うことができるのは、演劇的な大きな仕掛けが必要になる。
いつものフレーズだが、「どこか遠い国の昔の話」と観客が思うようではだめなのだ。

これは自分たちの話。
わたしの話。
ク・ナウカの芝居をみたお客さんは例外なく勝手にそういう風に納得して帰っていくと思う。演出家の意図は必ずしもそこだけにあるわけではないのだが、決して万人受けの芝居でないク・ナウカの芝居に、これだけ多くのお客さんが惹きつけられるのは、このように受け取れる層が見に来る、ということであり、私はそれはいいことだと思っている。

初めてこの作品を見たときは、まだク・ナウカのメンバーではなかった。
身じろぎもせず「男性VS女性」「言葉VS身体」のせめぎ合いを見つめてしまっていたあのころを思い出すと、今この作品とともにパリに来て、2週間の公演をしていることが非常に不思議でもあり、またこの上なくラッキーだと思う。

考えても考えても明確な答えはでないけれど、メデイアとの旅は私の人生にとって大きな意味を持つだろう、ということだけが明らかな、パリでの日々。
残すはほんのわずか、一分たりとも無駄にしたくない。
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by uronna | 2006-10-28 01:33 | ク・ナウカ演出助手日記

マハーバーラタ パリ公演の模様

ケ・ブランリー国立博物館でのマハーバーラタ公演のようす。

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by uronna | 2006-10-15 21:44 | ク・ナウカ演出助手日記

復活。


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