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原点に戻るとそこは…春雨座。

9月12日(日)
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母校の文化祭を訪れる。

卒業してからも心のどこかには残っていた。
忙しくて来ることができなかったが、ずっと心から離れなかったその理由、それはここに私の演出家としての原点があるからだ。

この学校では、毎年有志でミュージカルを上演する伝統があった。
実際には、私が1年の時の3年生が「あそこまでのカタチにした」と言っていたので、そこまでの伝統ではなかったのかもしれないが、とにかく私たちは「伝統」を引き継いだ。
上演演目は、「レ・ミゼラブル」。何年たっても、それは変わらない。
あの壮大なストーリーと、胸をうつナンバー、初めてそれを観た時の感動はいまでも忘れない。

1年の時はアンサンブルだった。ロンドンでホンモノを見て、この舞台ができるならアンサンブルでも何でもすると思った。厳しい練習に、いつの間にか他のメンバーが抜けていき、1年生は私1人だけになった。短いソロをもらって、チョイ役だが役名もついた。
2年で、やりたかった役を射止めた。男役で、はまり役と言われ、私生活まで男になっていた。文化祭実行委員長をしながらだったので、激務で痩せ細っていた。「ますます精悍で、革命のリーダーぽくて、いいじゃん。」と自分では思っていたが、周りは「こいつ死ぬんじゃないか」と思ってたらしい。

3年、主役。そしてある演出家との出会い。
バルジャンは難しい役だ。「地でやれた」前の年とは違う。役作りのほかに、舞台をまとめる「座長」としての責任がのしかかってきた。そのころだ。帝劇でホンモノの「レ・ミゼラブル」を上演中だった演出家の人が、噂をききつけて稽古を観に来てくれたのは。

思い返せば無知だったものだ。
演出家の何たるかも知らなかった私を、その人は稽古後に呼んで言った。
「君は、主役をやりながら演出家もやっているんだからね、よっぽど大変な仕事だ。しかし良くやっているよ。」
そのときは、ほめられたのか、何なのか良くわかっていなかった。
私がやっていることが、「演出家」の仕事なのか、とおぼろげに理解し、その言葉が私のその後の舞台人としての活動にいつも存在してきた。
役者をしながらも、「演出家」の視点を失わずにやってきた。
そしていつか本当に、演出家になろうと思った。

今はもうその人の名前も覚えていない。
演出家としての道を歩き出した今、もう一度その人に会いたい、あって話がしたい、そう思う今日この頃である。

その人から話がいったのか、団員の追っかけぶりがすごかったのか、真相は良くわからないが、当時マリウス役だった石井一孝さんほか、入江加奈子さんや何人かのプロの役者さんたちが本番を観に来てくれ、大いに沸いた自分の舞台を懐かしく思い出す。


さて、今日。伝統はたしかに受け継がれていた。
現役高校生による、「レ・ミゼラブル」。それは感動という点で、最大瞬間風速的にホンモノの舞台を凌駕する。今年も、すばらしい舞台だった。
一人一人の舞台に対する想いが、細かいところにまでいきわたり、美しいまでの調和とパワーを生み出す。この舞台を愛するこころ、作品を実現する情熱が、全ての舞台活動の原点である。
このなかから、一体何人が舞台人を目指すのかはわからない。
プロとしての道を目指さないにしても、今日この日の舞台の成功は、彼女らの今後の人生に、なんらかの大きな力を与えていくに違いないのだ。

どうかその誇りを、自信にかえて未来を自分たちのものにしていってください。

私も、久々に刺激されました。
迷ったらここに戻って、また考え直せばいいのです…。
by uronna | 2004-09-13 23:45 | 劇評、書評、映画評

復活。


by kawasaki Alice