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ポエムンシアター

きのうは川ファクで夜中まで飲み語り。
そんな寝不足の頭を抱えてふらふらしていると、静岡では言葉が怒涛のように渦巻いて襲い掛かってくるような作品が三つガン首そろえていた。昇天しろと?詩的言語の心地よい渦に飲み込まれて死ぬのは物書きならば本望といえるか。いや、地獄だろ。(笑)

『セキュリティ・オブ・ロンドン』@Boxシアター
『若き俳優への手紙』@芸術劇場
『彼方へ ~海の賛歌~』@楕円堂

このなかで『彼方へ』は、もう昨夜からずーっとTwitterをにぎわしてやまないキーワードとなっている。「クロードレジ、やばい」「衝撃」「とんでもないものを見た」とまぁ、普段は辛口の批評人たちも手放しの褒めよう。私なぞがここに書き留めるには言葉が圧倒的に足りないので、彼らにまじってつぶやいておこう。「クロード・レジ様のほっぺたがたこ焼きのようでかわいいです(萌)」。つまり彼の作品に立ち会えたことと、彼自身のアフタートークが聞けたことのふたつながらにホント貴重な体験だったということである。

で、何かを語るべきならば私はこれを選ぶ。『セキュリティ・オブ・ロンドン』。監視カメラの王国。
脚本兼主演のゼナ・エドワーズに深い魅力を感じ、寝不足でたまに集中力が切れながらも終始面白く拝見した。スタイルとしてはひとりで数人の役を演じ分けるタイプのひとり芝居なのだが、彼女自身がそのテキストを書いているところに、ミソがある。彼女は自ら詩をつむぎ、それを自分の身体に乗せることを生業としているアーティストなのである。残念ながら、声が嗄れていて本調子ではないことがうかがえたが、それでもその身体が変化するさまは彼女のテクスト自体よりも声よりも雄弁で、それを見ているだけでも楽しめた。多少『大道芸』的な要素も感じないことはないが、小技の多さは彼女の技術力を底上げすることはあっても、否定するものではない。あの驚異的なリズム感、グルーヴ、音感という彼女のパフォーマーとしての恵まれた資質と、生命力と「人種」という言葉そのものを体現する外見ですでにこの演目は8割完成している。

だが、そこで語られる『物語』については正直あまり心に響いてこなかった。
パレスチナ人の中年男性と若い女性の街角での出会い、写真を通しての他愛もない会話、それはシチュエーションそのもので既に成立していて、内容は置き換え可能なものであった。ほかの二人の人物についてはさらに「遠く響く」。書き手のゼナに詞を紡ぐ能力はあるにせよ、それはあいまいな問題意識のコラージュであるような気がしてならない。おそらく、演じ手としてのキャラクター造形の綿密さに比して、詩人としてのそれは演じ手(自己)の表現力に全てを委ねてしまってあるのだろう。

書いて、それを演じること。
「Theater」という機構のなかでは、間に演出という第三者を挟むことは必須であるが、やはりそこにこの作品の弱みがあるとしたら、あるのかもしれない。「売り」は裏を返せば弱点にもなり得るのだな。
才能に恵まれた彼女が別の作者が書いた作品を今後見てみたいと思うのは私だけだろうか。それでも、彼女のこの「パフォーマンス・ポエトリー」という形式は存続可能だと思う。
by uronna | 2010-06-13 22:04 | 劇評、書評、映画評

復活。


by kawasaki Alice