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「わが町」を見てーby Marina


 「わが町」は今まで見てきた作品とはまた違った雰囲気の作品でした。ドラマチックな激しい作品でも、緊張感のあふれる作品とも違って、温かくて単調な作品でした。でもその単調さが心地よく感じました。どのキャラクターも素朴でどこにでもいそうな感じがしたので、きっと見ていて感情移入がしやすかったのではないかと思います。

 今回「わが町」を見て、最初に思ったのはなんて美しい風景なのだろうということでした。グローヴァーズ・コーナーズの平凡な朝が、すごく温かいもののように感じられて、そこでなんてことのないいつもの日常を過ごす人々がとても幸せそうに見えました。朝、新聞配達の少年が新聞を持ってきて、牛乳売りの青年が牛乳を持ってきて、隣人同士が挨拶をして子供たちが目を覚ます。登場人物のひとりのエミリはその平凡な毎日の素晴らしさに死んでから気がついたようでしたが、私は舞台を見て最初にその素晴らしさを感じました。グローヴァーズ・コーナーズではたくさんの人が交流していたのが、温かく感じられた一番の理由かもしれません。人は他の人と交流して、話して、関わりあってこそ幸せになれるのかもしれないなと思いました。

でも私たちの日常も、私たちは気づいていないだけですごく幸せなものなのかもしれないと思いました。毎日同じように過ぎていっているように感じますが、それが本当はすごく幸せなことなのかもしれません。ただ、やっぱり私もその幸せを生きている間にどれだけ実感できるかと考えたら、あまり実感できないのではないかという気がします。平凡な毎日に退屈して、何か大きなものを求めて、いつも欲深く生きていくような気がします。仮に平凡な日常が本当の幸せだとしても、なにが幸せなのか気づかないまま流れるように生きていって死んでしまったら、もはや幸せではないような気もします。大きな何かを手に入れることも一つの幸せなような気もするし、でもその根底には平凡な毎日があるから幸せなような気もして、「なにが幸せなのか」というのはとても難しい問題だなと思いました。でも一つだけ思ったのは、今生きていることに感謝して生きていきたいなということです。死んでから気づいては遅いこともたくさんあると思うので、今生きていられることがありがたいことなんだなと、今回の舞台を見て思いました。

見ている間は色々考えずに感じながら見ていられて、見終わってから色々なことを考えさせられる公演でした。温かい舞台を見られて良かったなと思いました。
(真梨奈)
by uronna | 2010-11-13 22:51 | 稽古場日記

復活。


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