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髑髏城の7人(アオドクロ)

11月1日(月)

ちょっと前になるが、「髑髏城の7人」の劇評を書き忘れていたのを思い出しました。
新感線の舞台は本当にひさしぶり。

だいぶ「エントランスフィー」が高くなってしまった、しかしその分敷居は低くなってきた。「阿修羅城」もビデオでは見ていたが、最近まったく劇場で新感線を見ていなかった。それが、たまたま見る機会を頂いたのは、本当にラッキーだったとしか言いようがない。
「大衆演劇」
という言葉を、改めて考えさせてくれる成長した新感線を見られて、今回はかなり収穫があったと思う。

「アオドクロ」とは、新感線が制作する「アカドクロ」に対して松竹が制作を担当したプロダクションを指す。ひとつの脚本を、違うキャストで、演出も全く変えて上演するというのだから贅沢な企画だ。なにより、脚本の中島かずき、演出のいのうえひでのりの両名にとって創作者冥利につきる企画ではないだろうか。うらやましくて仕方ない(笑。

染五郎が、一人二役で演じる主役の捨之助と天魔王。
これはアカドクロでは古田新太が演じる役だ。(これは実際新感線にとっては再演で、初演ではやはり古田が演じている。)
歌舞伎役者の染五郎に華があるのは当然で、とにかく美しい。かっこいい。これは阿修羅~のときから感じていたことだが、染五郎にはこの「現代歌舞伎」がとてつもなくよく似合う。

それから、「森蘭丸」の蘭兵衛に池内博之。彼はドラマ「人間の証明」で黒人「ジョニー」の役を演じていたことでも記憶に新しいだろう。しかし、和装で殺陣をやる彼がここまで美しいとは全く想像していなかった。

そして百姓上がりの伊達武者忠馬に佐藤アツヒロ。
演技はいまいちな彼をうまく生かしてしまうのがいのうえ歌舞伎の魔術だろう。ちょっと前にみた「楡の木陰~」とは対照的に、未熟な役者をうまく使う演出家の手腕に脱帽。

アカドクロ、がシンプルな人間ドラマに仕上がっていたという評判を聞きつつ、今回のアオドクロの派手さ加減にもまた感銘を受ける。
日生劇場を処狭しと使い、蠢く大道具、小道具。火は出る、(水はでなかったが)、血飛沫は飛ぶ、(人は飛ばなかったが)、あかりは例によってそれだけで金を払っても惜しくはない技術の粋を凝らした遊びぶり。衣装に音楽に、ほんと第一級のエンターテイメント。
ふと、これが海外公演を行わないことを遺憾に思ってしまう瞬間すらあった。
商業演劇は、ペイしないことはしない。
これだけ、日本で客が入っていても、コスト対効果を考えると、もっていく気はしないのだろう。そして、これを「日本の文化」として輸出することに、日本演劇界と文化庁はまったく否定的な見解を示すのだろう。

ナンセンス。

私が外国の友をつれてきたら、歌舞伎より先にこの舞台を見せるだろう。
形式を越えて、人間の発することのできるパワーの横溢を見ることができる、この舞台はエンターテイメントだとか芸術だとかいう議論の域を軽々と越えている。

次回はミュージカルだという。
どこまでつっぱしってくれるのか、新感線は。松竹というバックアップを得ながら、そのオリジナリティある歴史絵巻の創作技術をもって、独自の表現方法を見出した、底力のある劇団。激震にもちかい衝撃をもって、これからも日本のコンサバな演劇界を揺さぶって欲しい。次回作は帝劇。ゼッタイ見なければ・・・と決意を新たにさせられたAshleycatなのでした。
by uronna | 2004-11-01 01:58 | 劇評、書評、映画評

復活。


by kawasaki Alice